体操選手を裏で支え続けた人 中島 啓さん

この夏、リオオリンピックで感動の旋風を巻き起こした体操男子。

団体の金メダルにこだわり続けていたその選手たちの身体と心を裏で支え続けた人がいました。リオオリンピック体操競技男子日本代表チームに帯同されたトレーナーである中島先生にお話を伺いました。

トレーナーを目指したきっかけは?

私は小学校の頃から器械体操をしていました。中学生の頃に、当時学生チャンピオンだった日体大で「日本一の体操を見てみたい」と思っていました。進学した高校には体操部がなかったので、小学校の頃から通っていたジュニアクラブに通い、ジュニアの子たちを教えながら自分も練習するという日々を送っていました。

その後、日体大に通い2年生で体操の現役を引退し、コーチを目指そうとしました。

しかし、年上の同期が体操男子のコーチをすることになり、どうしても男子体操に関わりたいという思いからトレーナーになる決意をしました。その当時は、トレーナーの仕事をしたいというよりも、選手と一緒に上を目指したいという気持ちの方が大きかったのかもしれません。

トレーナーの仕事とは?

トレーナーといえば、鍼灸マッサージをしたり、ケアしたりという印象が強いかもしれませんが、それだけではなく、選手たちをケガがなく、どうすれば全日本で勝てる強い選手にすることができるのかということを考えるのも仕事のひとつです。

技術面はコーチが教えますので、コーチがこういう動作をした方がいいと言った時に、指示された動作がスムーズにできる身体の準備をさせるのもトレーナーの仕事です。

また、ケガをした場合、復帰後に最善のコンディションに持っていき、「ケガ前よりも更に強くなったんじゃないの」と言われるような復帰をさせてあげることも私の仕事です。

リオオリンピックで気にかけていたことは何ですか?

体操選手というのは、通常人が使わないような可動域を使って行う競技なので、痛みはつきものです。

器具ひとつにしても、海外の器具と日本の器具は違います。例えば跳馬ひとつを取っても、跳ね方が違うし、形も異なりますから、選手はそこに合わせていかなければならないのです。

私たちも、オリンピック前に遠征に行くので、それぞれの国が使っている器具を頭に入れておきます。「その器具の堅さはこうだから、この選手はこういう手の着き方をするから手首が痛くなるだろう」など予測をし、未然にケガを防ぐようアドバイスをしたり、その時々の状況に応じて、身体の変化を感じとり選手にいち早く伝えていくことも気をつけていました。

特に体操の選手というのは、痛みなく競技を行っている人はほぼ居らず、痛みをコントロールしながら競技しているので、翌日の痛みを軽減させ、毎日練習できる状況を作っていくというのがベストパフォーマンスにつながります。試合のピークに合わせて、逆算して身体をメンテナンスしていく必要があります。

リオオリンピックに帯同され、体操男子が金メダルを取った時はどんな気持ちでしたか?

金メダルは取ると信じていました。

特に、床の競技が終わった瞬間に、「もう日本は追いつかれることはないだろう」と確信を持ちました。共に闘っていた感じです。

選手が高校生や大学1年生の頃から診てきているので、彼らがケガをして苦しい時期を乗り越えてきた姿も知っています。だからこそ、選手の最高の笑顔を見た時には鳥肌が立ちましたね。選手たちはもちろんスタッフ全員が団体にこだわっているところに、日本の良さがあると思うし、世界的に強い日本の選手たちは厳しい国内選考を勝ち抜かなければ代表チームに入ることさえ難しい、そのことが日本体操界の底上げにもつながっているようにも思います。

2020年東京オリンピックでは、東京有明医療大学の近隣に体操の競技場ができる予定です。どのように体操を楽しめば良いのか教えてください。

日本の体操は、どの世代でも世界レベルから言ってもかなり高いです。世界のトップを常に見据えてやっている体操はいつ観に行っても感動すると思いますので、ぜひ生で見てみて欲しいです。

また、オリンピックだけではなく、日本体操協会のHP からも体操競技大会の開催をチェックできますので、オリンピックが始まるまでも、選手を観に行き応援してください!オリンピックまで待たなくても、迫力のある熱い演技が見れますよ!

中島啓トレーナー

プロフィール

中島 啓(なかじま けい)

日本体育大学 平成12年3月卒業
日本鍼灸理療専門学校 本科 平成15年3月卒業
けい治療院 院長