2016 年10 月29 日(土)に東京有明医療大学にてリオデジャネイロオリンピック日本代表チームトレーナー4 名による公開講座「トレーナーから見たリオ・オリンピック・パラリンピック ~2020 年に向けて~」が開催されました。
本記事では講座の中で行われたパネルディスカッションと質問コーナーの様子をお伝えします。
体重管理、食事管理はどのようにしていますか?
小沢 邦彦 先生 (競泳日本代表チームトレーナー)
競泳は男子ではカロリー摂取の制限はありません。女子は選手によっては太りやすい体質の者が
いるので、個々で栄養士やコーチの指導を受けている場合があります。
田中 基義 先生(シンクロナイズドスイミング日本代表チームトレーナー)
朝昼晩と体重を測ります。体重が1 キロ変わるだけで浮力が変わり、水中での倒立姿勢に影響が
出てしまうためです。
選手は1 日5,000kcal 以上摂らなければいけませんが、食事に時間をかけすぎないよう、栄養士
である自分が選手の食事のペースメーカーを担当しています。
選手は夜寝る前にお餅を食べてから寝る者もいます。
中島 啓 先生(体操競技男子日本代表チームトレーナー)
男子は食事の規制はありません。選手が各自で調整しています。選手の中には1 日1 食の選手も
います。体重の増減はほとんど無く、いつでも目標体重に維持する選手が多いです。トレーナーは
体重の経過観察をしています。
女子は非常に細かく体重を管理しています。朝昼晩と体重を測り、目標の体重の範囲外の場合に
は走るなどして目標体重になってから練習をする選手もいます。
古舘 昌宏 先生 (7 人制ラグビー男子日本代表チームトレーナー)
食事については厳格なコントロールはしていません。
練習の期間の体重管理は、選手の身体に普段と違いがあるかどうかの確認のためにします。
試合時の体重管理は脱水の有無をチェックするために行っています。
ラグビーは身体が資本なので、体重をなるべく減らさないように、トレーナールームにプロテインやサプリメントを置いて常に食べられる環境にしています。
試合が近い時期と練習で追い込む時期でトレーナーの役割や意識の違いはありますか?
小沢先生(競泳日本代表チームトレーナー)
トレーナーとして必要な時期は強化の時期だと思います。この時期にいい練習ができるようなコンディショニングと故障予防のためのケアをします。
競泳は試合が近くなると練習量が減って休める時間が増えるので、選手の主訴を中心に短い時間
で対応するようにしています。
田中先生 (シンクロナイズドスイミング日本代表チームトレーナー)
強化の時期は競泳と同様です。
試合の時期になると監督のゲキも強くなってきて、強いメンタルを持っている選手も落ち込んだりします。声掛けをして選手の心を和らげるようにしています。
中島先生 (体操競技男子日本代表チームトレーナー)
体操はほとんど1 年中が試合なのですが、唯一冬場が強化期で、難易度の高い技の練習をしたり、1 年間ケガをしない身体づくりを行います。あとは試合に合わせて調整する活動をしています。
古舘先生 (7 人制ラグビー男子日本代表チームトレーナー)
強化の時期は選手が故障してしまわないようにするための対応をします。
試合の時期は疲労を取る活動が大きいです。試合後は故障する前の選手が出てくるので、その選手が次の日なんとか動けるように持っていくための活動をします。
若い人達へのメッセージをお願いします。
小沢先生 (競泳日本代表チームトレーナー)
自分が現役時代に「あの時こうしてもらいたかった」という経験を活かしたトレーナーになってください。
先輩トレーナー達の手技を実際に受けみて、自分がやりたいことを見つけたらその先生に食らいついて、自分のオリジナルの手技として身につけてください。
田中先生 (シンクロナイズドスイミング日本代表チームトレーナー)
常に「どうやったら選手にとって良いのか、早く治るのか」ということを考えて勉強をし、自分を高めてください。自分のプライドを持つことも大切ですが、分からなければ頼れる先輩に相談できるような環境づくりをしてください。
中島先生 (体操競技男子日本代表チームトレーナー)
自分がずっとやってきたのは積み上げることと行動することです。選手も4 年間積み上げて動き続けたからオリンピックに出場できたのだと思います。
古舘先生(7 人制ラグビー男子日本代表チームトレーナー)
ラグビーが五輪正式種目になったことも含め、今回はいろいろな偶然が重なって帯同する機会をいただきました。大切なのは日々の積み重ねだと思います。
東京オリンピックを盛り上げるために必要なことは何だと思いますか?
小沢先生(競泳日本代表チームトレーナー)
トレーナーは基本的に裏方仕事です。「自分がこの選手を育てた」というように選手を抱えてしまわず、みんなで一人の選手を良くしていく中での1 トレーナーという立ち位置で裏方業を頑張りましょう。
田中先生(シンクロナイズドスイミング日本代表チームトレーナー)
自国開催なので日本に有利な環境づくりが重要だと思います。試合会場の近くにサポート施設を
設けられれば良いと思います。
中島先生(体操競技男子日本代表チームトレーナー)
どの競技でも良いので、今から競技会場に足を運んで、生で競技を見に行くことだと思います。
競技の素晴らしさをできるだけ多くの人に伝えてください。選手たちが応援してもらえることが東京オリンピックの成功につながると思います。
古舘先生(7 人制ラグビー男子日本代表チームトレーナー)
様々な人の陰ながらのサポート、応援があったからこそ日本選手団が活躍できたと思います。東京オリンピックでも皆さんの応援が重要だと思います。
以上がパネルディスカッションと質問コーナーの内容になります。
当日は100 名以上の来場者にお越しいただきました。
講座終了後も多くの参加者が質問に訪れ、先生方は一人ひとりに丁寧に答えてくださっていました。
学校法人 花田学園では今後もこのようなイベントを通して、トレーナーを目指す方をサポートし、2020 年東京オリンピックの成功に協力してまいります。